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zoom RSS 空気 読めない症候群

<<   作成日時 : 2008/08/12 02:03   >>

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6月、バンガロールにあるカウンセリング・センターを訪れた。

目的は、毎日行なわれるグループ・カウンセリングに参加すること。
ここはとてもユニークな療法で、若者の精神的な問題を解決している
メンタル・リハビリテーションの場である。

ある朝、吹き抜けのオープン・スペースでお茶を飲んでいたら、
3ヶ月前には見かけなかった新人の女性患者が話しかけてきた。

「は〜い! どこから来たの? ここをどうやって知ったの?」

  日本からよ、友人に紹介してもらったの。
  あなたは普段、何やっているの?

「わたし? 一級建築士よ」

  へ〜 建築士 かっこいい職業ね。で、どうしてここに来たの?

「兄がね、ここに行ったらいいよって、連れてきてくれたの」


と、『Why(どうして)』ではなく『How(どのように)』という答え。
が、とても社交的で知的な女性という印象だ。

その後、彼女の様子を観ていても、よく働く(食事の片付けや
掃除等は当番制)し、誰とでも仲良く交流しているようだった。

日常生活を見ているだけでは、彼女がここにいる理由や、
メンタル的にどこを矯正するのか、わたしには判断できなかった。

午後のセッションで、彼女を含む5〜6人のグループ
カウンセリングを見学することになった。

サイコセラピストの誘導で、各人の課題に焦点が当てられた。
彼女の順番になった。

「わたしはみんなと仲良く過ごしたいから、なるべく自分から
話しかけている。しかし、Aさんはわたしの行為に応えてくれない。
それどころか怒っているようにも感じるが、なぜなのか?」

彼女が指摘したAさんは、同じグループ内にいる男性である。
名指しされた彼から、何らかのコメントがあるかと思いきや、
素知らぬ顔で、彼女のいい分を聞いていた。

彼女はセラピストから、なぜそのような状態になったのか、
自分なりにどう考えているのかと問われた。

「まったく理解不能です。わたしは彼とよい友人になりたいし、
なれると思って接している。なのになぜ、挨拶すらしてくれないのか?」

とうとう男性が口を開いた。

「彼女とは、友人になれるとは思えない

厳しい反応だった。彼は、明らかに彼女に対して
何らかの “引っかかり” があると感じられた。

それら全体の状況を把握しながら、『気づき』を促す質問が、
彼女に次々と浴びせられた。

ここでのグループ・カウンセリングは、なにもキッズ(患者)と
セラピストだけのセッションではない。

キッズ同士もその課題に取り組み、意見・質問を投げかける。
だから、さまざまな角度で自分を分析してもらえる。

彼女が、いろいろな人の指摘を受け、どうやら彼は自分を
受け入れてくれない理由があるのだと理解しはじめた。
それがわかった途端、彼女が放った言葉は、


「ごめんなさい、わたしが悪かったようね」


という謝罪。その瞬間、複数から攻撃を受けた。

「彼は、あなたに謝ってほしいわけではないの! ただ、人の気持ち
を理解してほしいと思っているだけなの。気づいてほしいから、
敢えて挨拶もしなかったのよ」


根本原因を探ろうとせず、表面的に出ている問題だけを
解決しようとする
彼女のいつものパターン『人生ゲーム』に、誰もが
「そこが一番問題!」と諭していた。

極め付けは、普段から無口な別の男性が、

「そう、君はいつも 『人の傷口に塩を塗りこむ』 んだよね」

と手厳しいひと言。一息おいて、セラピストが彼女に尋ねた。

○○(名前)、どんな気持ち? 今のあなたの内面は・・・

「・・・こ、混乱しています・・・」

Good! それでいいのよ。それはあなたが今までと違うパターンで
心の内側を観察しはじめた証拠。混乱を受け入れ、なぜそうなった
のかじっくり考えてみることね。

わかった? Aさんはあなたの何かに引っかかっていて、そのことを
差し置いたまま、あなたが何ゴトもなかったかのように、積極的に
近づくほど、態度が固くなっていったというわけ。

そんなときは、『Aさんはなぜ自分を受け入れてくれないの?』という
一方向的な捉え方ではなく、Aさんに受け入れてもらえない
“自分”側に目を向け、原因を考えてみることね。


「 ・・・ わ、わかった ・・・」

そのときの彼女は、Aさんに胸張って意見を述べたときとは打って変わり、
混乱極まりない虚ろな目で、みんなを見つめていた。

つまり、彼女は古い言葉になるが、
『KY』ーー空気が読めない女だったと。

一連のセッションで、知的でリッパな職業の、一見 積極的な彼女が、
なぜ、仕事をやめてカウンセリング・センターに入寮しているのか、
人間関係の支障を憂えた兄の愛が、ここまで彼女を
連れてきたと、ようやく理解できた。

ここのセッションに参加するたび思うのだが、ひとりひとりに厳しい
言葉を伝えるときのセラピストからは、深い愛を感じる。

何とかここで気づかせ、社会復帰させたとき同じ過ちを繰り
返さないようにとの、まさに親心そのものだ。


また、小さい頃、親の仕事の関係で世界中を廻っていたある男性は
ここでは積極的にリーダーシップを発揮している。
流暢な英語で、わたしによく話しかけてくれる。

  あなたみたいな人は、ここにいる理由なんてないんじゃない?

と、聞くと

「うん、もう来月には仕事に復帰するんだ。ぼく、ホテルマンなんだよ。
ただ、怒りがコントロールできなくてさ・・・」

このように、人格面での矯正を目的とした方から、誰とも会話を
しない引きこもりぎみの方から、統合失調症に至るまで、幅広い
若者たちのグループ生活が、ここでは re-parenting(再親業)
と称して実施されている。

キッズたちは朝・昼・晩あった出来事を、観察しながらセラピストと
一緒に考えていく。そして、急速に心の変化を遂げていくのである。

ここまで本音と本気で、内面に踏み込んでいくことは、肉親でも
限界がある。しかし、このセンターでは他人同士で毎日それを
繰り返し、短期間での再・人格形成を図っている。


ともすると、自分が良かれと思っていることでも、他の目線からは、
苦痛そのものという
ことを、無意識に自分でも犯しているかもしれないと、
彼女を見ていて、人ごととは思えない気がした。

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